CASE STUDY

2022/08/05 経営支援

30代トップランナーが語る新時代のキャリア設計

30代トップランナーが語る新時代のキャリア設計

本記事は、経済コンテンツメディア「 PIVOT」により制作されたものです。

ビジョナリーを招き、キーワードをもとに掘り下げていく番組「& questions」。
今回のゲストはコンサルティング会社のリヴァンプ。
インタビュアーはPIVOT CEO 佐々木紀彦。

最初の就職は「社会経験」。ハードな日々も人生の糧

佐々木 今回は「30代トップランナーが語る新時代のキャリア設計」というテーマで、リヴァンプ取締役執行役員の千田勇一さん、メルカリ執行役員 VP of Business Growth兼メルロジ取締役(※2022年6月時点)の迫俊亮さんにお話を伺います。

お二人とも30代で取締役に就任して会社を牽引されていますが、最初のキーワード、今にいたる起点になったであろう「学生時代」はどのように過ごしていたのでしょうか。

お二人とも30代で取締役に就任して会社を牽引されていますが、最初のキーワード、今にいたる起点になったであろう「学生時代」はどのように過ごしていたのでしょうか。

千田 私は部活漬けでした。入部した一橋大学の体育会のラクロス部は関東一部リーグに所属するチームで、朝練習し、昼は寝てまた練習に行くような毎日。学びに行くというよりラクロスのために大学に入ったようなものです(笑)。

もちろん試合も重要でしたが、一番楽しかったのはチームづくりです。指導体制が整っていたわけではなく、練習メニューなども自分たちで考えていたので、今思えば組織づくりをするような側面に夢中になっていたんだと思います。

佐々木 卒業後はゴールドマン・サックス証券(GS)に入社していますが、就職についてはどのように考えていたんですか。

千田 大学4年になるまでラクロス日本一を目指していたので、実は就職は何も考えていなくて……。

一橋大学ラクロス部時代

まずはさまざまな業界と関わりながら社会経験を積めたらと、コンサルティング会社を受けることにしました。ところが「最近は金融が伸びているらしい」とか「六本木ヒルズがかっこいい」といった声を耳にするようになった。

佐々木 金融ビッグバンを経て外資系の金融機関が台頭してきた頃ですもんね。

千田 それで興味が湧いたので、投資銀行の知識もないのにエントリーシートを出し、GSの説明会に行ったんです。

そこで見たのは「私たちは創業以来、負けたことはない」「常に世界一だ」と自信を持って口にする社員たちの姿でした。当時の自分は体育会系の思考方法でしたから、「この自負はどこからくるのだろうか。何かすごい秘密があるに違いない!」と思って、とりあえず入っちゃいました。

ゴールドマン・サックス時代

佐々木 「とりあえず」で入れるのがすごいですよね。迫さんはどのような学生でしたか。確か、福岡のヤンキーだったんですよね?

服装だけヤンキーっぽかっただけです(笑)。当時、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』が流行っていて、ファッションをまねていたんです。

高校時代は全く勉強せず成績も悪かったんですが、英会話だけは覚えるのが楽しくて留学を決意しました。コミュニティ・カレッジからカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に編入したんですが、そこで社会学者になりたいと奮い立って勉強にのめり込んだ。だから、留学中はひたすら本を読んでいましたね。1000冊は読んだかもしれません。

カリフォルニア大学時代

佐々木 すごいですね。しかし、学者になるなら博士課程に進むものです。そうしなかったのは、どのような決断があったんですか。

 社会学者を目指したのは「社会を良くしたい」と思ったからです。だからアメリカのハロルド・ガーフィンケルやイギリスのアンソニー・ギデンズといった著名な社会学者に話を聞きにも行きました。

ただ、話自体は素晴らしいんですが、彼らが実際に社会を変えているわけではないんですよね。それは政治家や経営者だったりする。自分の手で社会を良くしたいならビジネスの世界に行くべきじゃないか。そう悟って方向転換をしました。

佐々木 三菱商事を選んだ理由は何ですか。意外と保守的ですよね。

 実は大学4年の時に小型人工衛星を扱うベンチャーを友人と起業したんですが、全くうまくいかなかった。経営スキルがなかったんですね。反省した私は企業で経験を積むことにしました。商社を選んだのはグローバルに働けると思ったから。正直、あまり深く考えていませんでした。

佐々木 お二人とも深く考えずに就職したんですね。でも、そんなものかもしれません。実際に入ってみてどうでしたか。千田さんは一番ハードだといわれる投資銀行部門ですが。

千田 今は違うかもしれませんが、最初に感じた通り、体育会系な企業でした。とにかく負けるな、もし負けたら次勝つために死ぬ気で取り組め、という気概がすごかった。

当時は上司から呼び出されると土日も関係なくすぐ出社しなければならないので、オフィスから徒歩5分のところに住んでいました。朝8時に出社して夜中の2時に夕飯を食べ、明け方5時に帰って少し寝てまた出社、という生活でしたね。

佐々木 それは過酷ですね。

千田 でも、若かったので全く苦ではなく、楽しく過ごしていました。もちろん肉体的に疲れることはありましたが、仕事とは何か、社会がどのように成り立っているのか、新しい知識を得られるのがとても面白かったんです。

佐々木 三菱商事も名門です。迫さんは働いてみてどう感じましたか。

 実は、半年で辞めたのであまり覚えてないんです。正直、「三菱商事にいた」というのも申し訳ないくらいです。

佐々木 なぜ辞めたんですか。

 入社前に半年間働いていたマザーハウスに戻ったんです。マザーハウスは発展途上国の素材と人材を生かした上質な商品を世界に展開するベンチャー企業です。当時はまだ立ち上げ段階でしたが、そこでの仕事がとても楽しくて、今戻らないと後悔すると感じたんです。

佐々木 なるほど。千田さんもGSを3年で辞めています。次回は2つ目のキーワード「転職」について伺っていきましょう。

企業、社会に変革を起こす経営人材を目指せ

佐々木 今回は「転職」について伺います。千田さんはなぜGSを辞めたんですか。

千田 入社3年目の2008年にリーマン・ショックが起きたんです。金融界に激震が走り、自分もこれを機に金融ではないキャリアを歩もうか考える一つのきっかけになりました。

自分としてはまだ続ける気でいたので悩みましたが、ちょうどその頃、GSが投資していたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の経営再建のためにプロの経営者がアメリカから来日し、私はその経営会議などの議事録などをとっていました。

プロ経営者が入ったUSJはみるみるうちに回復していきました。もちろん金融の力もありますが、私は企業を中から変えていく人たちのすごさを目の当たりにしました。そして、自分も内側からプレーヤーの一人として変革を起こしたいと思い、転職を決意したのです。今思えば、部活と同じようにチームで何かを成し遂げることに魅力を感じたのかもしれません。

佐々木 リヴァンプを選んだ理由は何ですか。

千田 もともと、現在の代表取締役社長 執行役員CEOの湯浅智之と知り合いで、いろいろ相談していたら「うちにこいよ」と、創業者の澤田貴司(元ファミリーマート社長)と玉塚元一(現ロッテホールディングス社長)に引き合わせてくれました。大変勢いがある方々で会った時点で「明日からよろしく」「はい、明日から行きます」と即決でした。

佐々木 思い切りましたね。直感で決断できるタイプなんですね。迫さんは三菱商事を辞めてマザーハウスに戻ったわけですが、その後はどうなったんですか。

 最初はひたすら大工をしていました。当時はスタートアップの資金調達の環境が今ほど良くなくて、お金がないので自分たちで店舗をつくっていたんです。私が実際に大工さんに弟子入りして技術を教えてもらい、設計図も自分で引いた。気づいたら13店舗ぐらいつくっていたんですが、その時は体つきが変わっていましたね。

マザーハウス時代

佐々木 経営には関わらなかったんですか。

 人がいないので基本的に何でもやります。当時は早朝に決算して昼は大工、夜はマーケティングなどの分析をしていました。棚卸しは主に深夜でしたね。

佐々木 お二人とも体力がありますね。

 鍛えられました(笑)。その後、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」というマザーハウスの企業理念を実現するため、自ら手を挙げて台湾展開を始めました。2年ほどで何とか台湾はかたちにできましたが、大成功とは言い難く、世界に通用するブランドには全然届かない。何が足りないんだろうと考えた時に、行きついたのはやっぱり自分の経営スキルの乏しさでした。

しっかりと経営を学ぶ必要がある。そう悩んでいた時に友人がユニゾン・キャピタルを紹介してくれました。投資先の経営を短期間で改善し、企業価値を高めて売却するファンドです。

ここなら自分が抱える課題が解決するかもしれない。そう思って面接を受けたところ、当時ユニゾンが買収したミニット・アジア・パシフィックに入社することになりました。靴の修理で知られる「ミスターミニット」を運営する会社です。

佐々木 迫さんも千田さんも、転職によって3つ目のキーワード「改革」の請負人として実績を上げていくことになります。千田さんはまず、どのような事業の改革に取り組んだのですか。

千田 最初は再生フェーズにある会社の支援でした。その段階の企業はファイナンス的なアプローチで助けることが多いのでGSで培った経験が生きましたね。しかし、次にアサインされたラーメンチェーン店の再成長を手がける案件はファイナンス的アプローチだけではうまくいかなくて……。先輩に相談すると「現場に行ってこい」と言われました。

リヴァンプは「現場で一緒に汗をかく」ことを非常に重視しています。私は先輩の言葉を受けて、午前中にデスクワークをし、午後は店舗でラーメンを茹でるような生活を半年ほど続けました。そうしたら、いろいろなことに気づけたんです。

佐々木 「現場」は4つ目のキーワードです。具体的にどのようなことに気づいたんですか。

千田 例えば、店の売り上げを上げるにはどうすればいいか。そのチェーン店は昼の時間帯が売り上げのほとんどを占めているので、昼の回転率が重要なんです。しかし、そこのラーメンは太麺で茹でるのに時間がかかる。結果としてそれが回転率を下げていることが分かりました。

さらに某人気チェーン店に入った時に、餃子を一口サイズにすることで焼き時間を短くして回転率を上げていることに気づいた。これは面白いと思って、茹で時間の短い麺を開発したり、餃子のサイズを変えたりしました。

佐々木 数字だけでは見えないディテールの部分が大切なんですね。

千田 もう一つ面白かったのが、リピーターを生む分岐点がどこにあるのか、ということです。店内の清潔度合いとかいろいろあるんですが、スープの温度も重要な分岐点の一つです。ある温度より下がるとお客さんも減るんですよ。

だから1日3回の抜き打ちチェックをしました。こうした改善を重ねていくことで業績も良くなっていったんですが、どれも現場にいたからこそ発見できたことだと思います。

佐々木 そういった発見が糧となって、他の改革案件にも生かされていくんですね。いや~面白い。次回は迫さんの「改革」について伺います。

末端こそ最先端。改革のカギは現場にある

佐々木 迫さんは初めから社長としてミニット・アジア・パシフィックに入ったんですか。

 いえ、最初は立て直し要員の海外事業マネージャーとして入り、オーストラリアやニュージーランド、シンガポールなどで改革を手がけました。これがうまくいったので2014年、29歳の時に社長に就任しました。

ただ、私に社長の経験がなかったのでメンターをつけることになりまして、自ら希望してファンドパートナーから澤田貴司さんを紹介してもらったんです。「最初にズバッと熱意を伝えよう!」と思った私は、最初の会食で改革案を一気に話しました。

ところが、澤田さんから返ってきたのは「ホント、キミはウザイね」という言葉。そして、「キミが言うことは正しいかもしれない。でも、外から来た若造がいきなり正論を振りかざしても誰も言うこと聞かないよね」とおっしゃった。

しかも、当時は髭を生やしていたので、それも咎められて……。現場の人たちが髭禁止なら自分も剃れって。まず現場の信頼を掴むことから始めるべきだ、と言われました。

佐々木 私もその頃に迫さんとお会いしていますが、確かに見た目がチャラチャラしてました(笑)。ここでも「現場」というキーワードが出ましたが、どのように現場に入っていったんですか。

 まずは小間使いに徹しました。現場に行って「ああしろ、こうしろ」と言うのではなく、小間使いとして現場に必要なものを聞いて対応する。「店が暑い」と言われたら扇風機を設置し、「靴の修理資材のクオリティが低い」ということなら別の資材に替えました。

佐々木 本来の社長業務はどうしていたんですか。

 組織体制を立て直さなければ何をやっても無駄だと思ったので、会社が求めていることについては待ってもらえるよう経営陣を説得し、最初の半年は社内全体の雰囲気の改善に取り組みました。

佐々木 なるほど。千田さんは現場を把握し、変えていくためには何が重要だと考えますか。

千田 「人」に対しては歴史を聞くようにしています。どの現場にも「僕はあの店長に育てられた」とか「この会社は3つの流派に分かれている」といった歴史が少なからずあるんです。それを知ると会社が立体的に見えてくるので、人間関係も含めて歴史の流れを把握することは非常に有効です。

また、常に「何に似ているか」という視点を持つようにしています。ミニットの担当になった時も、まず迫さんと一緒に広告を打ちましたが全く売り上げが上がらなかった。おかしいと感じて現場に行くと、ラーメンチェーン店のケースと似ていることに気づきました。ピークタイムの回転率が悪く、お客さんが待つのを嫌って帰ってしまうんです。

そこでピークタイムはスタッフを増やしてキャパシティーを広げると売り上げが上がりました。業態が違っても根本的な問題は似ている、ということはとても多いんです。

佐々木 ミニットの改革の時にお二人はタッグを組んでいたんですね。千田さんは当時、頼りになりましたか。

 とても頼りになりました。現場経験が豊富なので課題のあぶり出しも、その解決策についても的確なんです。増員に対する人件費率の計算や、株主・ファンドの信用づくりなど一つ一つ作戦会議をしながら解決していきました。社内では話せない経営者としての悩みも相談していましたね。

佐々木 いわゆるコンサルとして意見だけ言うのではなく、もっと泥臭いところまで関わっているんですね。千田さんは当時の迫さんをどう感じていましたか。

千田 みんなを巻き込んで進んでいく推進力がとても強い。しかも周囲の意見を受け入れ、自分が間違っていると思ったら止める決断力もあるので、スムーズに前に進むことができたのではないかと思います。

 ミニットには以前、喫煙所などで立ち飲みをする文化がありました。そこで一緒に飲むとけっこう本音を言ってくれる。「株主や経営陣が変わっていろいろやろうとするんだけれど、誰も現場に触らないんだよね」とか。みんな何が問題なのか分かっているんですよ。

佐々木 以前、「末端が最先端」とおっしゃっていましたよね。現場の話を聞くと正解が見えてくるということですか。

迫 そう思います。

千田 「目からウロコ」のような画期的な策が突然舞い降りることってあまりなくて、だいたい社内に解決策があり、キーマンがいるんですよ。でも、それが見えていないことが多い。だから見つけた瞬間はとてもうれしくなります。

クライアントの中古車販売チェーンにて

佐々木 答えはすでにあって、それをうまく引き出すことが大切なんですね。そのためには現場のモチベーションが重要になってきますが、どうやって高めていたんですか。

 ミニットでは、成功は経営陣でなく現場の手柄にしました。また、経営陣の覚えめでたい人よりも、現場で信頼されている人を優先して昇格させる。信頼している人がリーダーになれば現場の雰囲気もよくなって会社がうまく回るんです。

佐々木 まさに現場がカギを握っているんですね。これは他の案件でも共通する法則なんですか。

千田 そうですね。例えば社員が100人いたとして、その100人全員に向かってメッセージを出してもほとんどは聞いていません。それよりコアな5人に集中して伝えて成果を出す。そうすると残りの95人もどうやって成功したのかを知りたがるんです。その状況をつくることが改革の最初の重要なポイントだと思います。

リアルとデジタルを融合して新しい価値を生む

佐々木 前回は現場のリアルな話を伺いましたが、リヴァンプはITにも強い。5つ目のキーワード「リアルとデジタル」はどう組み合わせるといいのでしょうか。

千田 リヴァンプでは10年ほど前からITチームをつくり始め、現在は約250人の社員のうち150人超がITのチームです。ただ、必ずしもデジタルありきではありません。

私たちは会社や業務を変えることが第一で、そのためにデジタルが必要なら活用する、という流れで考えています。デジタルありきで事を進めると、全く見当違いの方向に進んでしまうことがよくあるんです。

佐々木 あくまでツールの一つということですね。メルカリはまさしくリアルとデジタルが融合した事業ですが、今はどのような事業に取り組んでいるんですか。

 メルカリはオンライン領域に強いので、今はオフライン領域に出ていくための事業をつくろうとしています。その一つが物流サービスを担う子会社「メルロジ」です。

メルカリをより使いやすくするために、テクノロジーを活用して集荷効率の最適化を図ろうと昨年立ち上げた会社ですが、他にもオフライン店舗と組んでアプリの外でもメルカリの体験ができる仕組みをつくるなど、さまざまな事業を展開する予定です。

佐々木 そもそも、迫さんはなぜメルカリに転職したんですか。

 ミニットの業務に取り組むうちにモノをもっと循環させたいと思ったのが一番の理由です。

ミニットのように修理して自分で使い続けることも大事です。ただ、生活や人生のフェーズの変化によってモノに対する好み、価値観は変わる。不要なモノが出てきた時に他の人とシェアできる仕組みがあるともっと長く使われるようになります。

つまり、フリーマーケットとリペアを大きな概念で統合していくことでモノがより長く使われ、社会に対するモノの価値も上げられるのではないか。これを突き詰めるにはメルカリに移ったほうがいいと思ったんです。

佐々木 マザーハウスの頃から一貫してモノが好きなんですね。リアルとデジタルの融合は今後重要になると思いますが、千田さんはどこに注目されていますか。

千田 デジタル化の一つの側面にデータを集めやすくなったことがあります。最近意識しているのは、そのデータを経営に生かすことです。

例えば、メジャー・リーグの大谷翔平選手の活躍で注目されたバレル率。打球の速度と角度を組み合わせた数値ですが、これはDXの力でデータの収集、分析ができるようになって生まれたものだと思うんです。

経営も同じで、いろいろなデータを見ているとバレル率のような発見がある。最近発見したのは、水族館は水の量が多いほどコストがかさむということです。水槽が大きいと当然水の量が増えますが、それだけでなく飼う魚も大型になってエサ代もかかる。

そこで「水当たり売上率」という指標をみんなで考えました。その値が最もいいのがクラゲだった。水族館ではクラゲが一番効率がいいんです。このように業種によっていろいろな法則があり、これらを経営にどう生かすかということがポイントだと思います。

佐々木 面白いですね。ただ法則を見つけても現場に反映しなければ意味がない。経営を成功に導くにはリアルとデジタルの両方の力が必要なんですね。

話は尽きませんが、いよいよ最後のキーワード「5年後」に向けてのことを聞かせてください。迫さんはまだメルカリにいますかね。

 どうでしょうか。私には昔から、グローバルに新しい価値を生み出すというテーマがあります。今はモノが循環しやすい仕組みをつくっていますが、目指すのはグローバルな社会の課題に対して日本で新しい価値を生み出し、世界に展開して課題を解消していくことです。

メルカリでそれが実現できるなら5年後もいるし、自分でやったほうがいいと思えば起業するかもしれない。常に一番いい方法を取れればいいと思っています。

佐々木 千田さんの5年後は?

千田 私はバブル崩壊にリーマン・ショック、デジタル化の到来と、変化の激しい時代を生きてきた世代なので、5年後は分からないというのが正直な思いです。ただ、その時その時、世の中に対して自分が最も価値を出せるよう準備しておきたい。

そのためにも一つ一つ目の前の仕事の価値をしっかり出す。それが経験値として次の案件、次のチャンスが来た時に最適なパフォーマンスをするためのベースになるのではないかと考えています。

佐々木 30代で改革、経営人材として活躍する人は日本には少ない。お二人のようになるにはどうすればいいでしょうか。

 “歪みのある会社”に行くといいと思います。体制が整った会社だと役職に就くまでに時間がかかります。一方、スタートアップや急成長企業で人手不足のところ、ファンド案件になるような再生フェーズの会社に行くと、年功序列もあまりなく、早くポジションが回ってくる可能性が高い。

佐々木 “歪み”という視点は面白いですね。千田さんはどうですか。

千田 自分が面白いと思う道を選ぶことです。私は、人の個性には「connect the dots(点と点をつなげる)」が大切だと思っています。迫さんがまさにそうですが、全く関係ない一つ一つの経験がつながることで、その人のユニークなバックグラウンドがつくられていく。

ユニークな人にはユニークな出会いや機会があるんですよ。だから他人にどう思われても惑わされずに、自分の考えでユニークに生きてほしいですね。

【アフタートーク】ミクスチャーキャリアが最強の経営者への道

佐々木 今回も人事企画チームの大場さんにお話を伺います。次世代のビジネスリーダーになるためのキーワードはなんでしょうか。

大場 前回もお伝えしましたが、やはり「ミクスチャー人材」であることです。不確実性が高い時代ですから、いろいろな経験を積んで多角的な視点を持ったミクスチャー人材こそが市場価値が高いと考えています。

佐々木 2つのスキルを掛け合わせた人材を「ハイブリッド人材」と言いますが、それよりもっと、「3つ以上のスキル」をミクスチャーした人が求められるということですね。千田さんはどのようなミクスチャーなのでしょうか。

大場 千田は新卒でGSに入って投資の経験を積み、弊社では現場に入りながらマーケティングやDX関連の仕事をしています。投資、マーケティング、DXのミクスチャーだからこそ、トップ経営者の方々と一緒に仕事ができるのではないかと思います。

佐々木 千田さんは「ミクスチャー人材」をどう感じますか。

千田 私も重要だと思います。前回、私は「ユニークなバックグラウンドがあるといい」と言いましたが、このユニークは「唯一の」という意味です。いろいろなものが混ざるほど特殊性が出てユニークだと思います。

佐々木 投資銀行出身で投資家やCFOになる人はいても、マーケティングをやる人はあまりいません。そこは意識していたんですか。

千田 成り行きです。面白いと思ったことを一つ一つやっていたら、意外と他にはいなかったという感じですね。

佐々木 ミクスチャー人材になるには何を意識するといいのでしょうか。

大場 千田の投資業務とマーケティングといったような、かけ離れたものを掛け合わせるといいと思います。

佐々木 リヴァンプに来るとどのような掛け合わせが得られますか。

大場 例えばアカデミックなバックグラウンドがある方なら、すぐに現場の仕事ができ、さらにオペレーションの仕事も経験できます。弊社の取締役執行役員CMOはずっと経営をしていますが、会議でCMの絵コンテを描くようなクリエイティブなこともする。そういった他にはない掛け合わせが実現できると思います。

佐々木 千田さんはどのようなミクスチャーを持つ人と働きたいですか。

千田 投資、マーケティング、ITといった“王道”にこだわらず、好きな分野にパッションを持っている人がいいですね。クリエイティビティが内在している人も一緒に働いていて面白いと思います。

佐々木 千田さんは今、プロジェクトをいくつ抱えているんですか。

千田 メインで担当しているのは1つですが、チーム全体を見ているのは15ほどあります。

佐々木 多いですね! さまざまな分野の案件を抱えている時点で毎日がミクスチャーでは?

千田 おっしゃるとおりで、朝は人事の話をして次は会計の話、その次はマーケティング、採用……と1日の中でいくつもミックスしています。

佐々木 その状況を楽しみながら、それぞれを磨いていく。経営者は究極のミクスチャー人材かもしれません。

大場 千田のチームは経営人材の輩出を目標の一つに掲げています。その千田がよく申しているのが「経営とは複数の要素が複雑に絡み合っているもので、瞬時にいろいろなことを判断しなければいけない」ということです。

専門性の強い経営者だと、複雑な局面に打つ手が限られて判断が下せないことが多いんです。だから専門性から一歩踏み出していろいろな経験をすることが大切。経営人材を目指す方は弊社に来ることでよりそこに近づけるのではないかと思います。

佐々木 自分の武器や強みを増やすためにもいいですね。

千田 そう思います。そして、そのためには「場」が大事です。場は2つあって、1つは「学ぶ場」。迫さんも初めはずっと澤田と組んでいたんですが、スキルは一子相伝(いっしそうでん:奥義を一人だけに伝えること)のように人から人に伝承される部分がある。これが「流派」になるんだと思いますが、私たちはその「場」を担保する。

もう1つは学んだことを「実行する場」です。弊社は実践で結果を出すことに重きを置き、実行の場を持ち続けているので、この2つの「場」で自分を磨いてほしいと思います。

佐々木 経営者になるための実践の学校のような側面もあるんですね。千田さんはリヴァンプについて経営者版の総合格闘技道場という表現もされていました。実際にブラジリアン柔術をなさっているとか。

千田 そうですね。もともと総合格闘技というジャンルはなく、ボクシングやキックボクシング、レスリングなどさまざまな格闘技が混ざって今のかたちになっています。総合格闘技を最強と言うには深い議論が必要ですが、その側面はあると思います。

佐々木 確かにボクシングだけではキックボクサーに足をやられてしまうし、そのキックボクサーも寝技に持ち込まれたら勝てないですからね。

千田 リヴァンプもそういう歴史をたどるのではないかと思っています。ある面はコンサルに見えるけれど、違う面は広告代理店、IT企業に見える。すべて繰り出すには全体を知っていて、かつそれを実践した経験がものをいう。

アメリカなどではそういうキャリアが当たり前だと思うんです。でも日本にはその流動性がないので、リヴァンプで流れをつくっていきたいと思います。

佐々木 最強の格闘家とうたわれたヒクソン・グレイシーのようになれ、ということですね。

千田 そうありたいです。